News
当社は、アジア開発銀行(正式名称:Asian Development Bank、以下 ADB)との間で高度技術信託基金(High-Level Technology Fund:HLT Fund)による「都市開発テクノロジー・イノベーション・チャレンジ(The Urban Development Technology Innovation Challenge)」の補助金交付契約を締結したことをお知らせします。この契約は、フィリピンにおける当社の「 貧困影響・脆弱性評価ツール(正式名称:Poverty Impact and Vulnerability Evaluation、以下 PIVE)」の開発を支援するものです。
PIVEは、モバイルデータ、衛星画像データ、国勢調査データ、現地調査データなどを組み合わせ、災害管理や都市計画などに携わる政策立案者、NGO及びその他の関係者の意思決定を統合的に支援するために設計されたツールであり、当社はその開発を担います。
この取り組みは、衛星画像と機械学習アルゴリズムを用いて多種多様なデータソースを含めることで、粒度の高い貧困マップの作成が実現可能かを検証した、現在に至るまでのADB技術支援プロジェクトに基づくものです。
例えば、衛星データからは、開発が活発なエリア及び貧困エリアの住宅数の増減、並びに高層ビルの増加、などの情報がわかり、国勢調査からは、年収や世帯情報が把握できます。PIVEはこのような複数のデータを統合することで、既存の地域基盤管理システムを補完し、社会の変化が社会的脆弱性をもつ人々に与える影響を「見える化」することで国や地方政府機関が対策を検討・実施することをサポートします。
SDGs(持続可能な開発目標)への貢献
フィリピンの人々やコミュニティに適切な支援や政策を届けるためには、第一に脆弱なコミュニティを特定する必要があり、PIVEが提供する統合されたデジタルデータ資産はここに大きな貢献を果たすことが期待されます。デジタル資産として得られた情報や質を常に更新、維持、蓄積することで、提供できるサービスの幅を徐々に広げていくことが可能になり、SDGsをサポートすることにもつながります。
PIVE は5 つの SDGs目標に貢献します。
PIVEは、社会的に最も脆弱なコミュニティや貧困に苦しむ人々を特定するのに役立ちます。居住環境の改善や医療、教育、経済機会へのアクセス改善など、支援を必要とする地域、集団を特定することでエビデンスに基づく適切な支援プログラムの実施を可能にします。地域の経済活動や資源に関するデータを提供することで、経済発展を促進し、貧困や格差の是正に向けた取り組みをサポートし、貧困の削減に貢献します。
PIVEはデータから電気やガス、水道、通信関係、交通関係の基本インフラなどの必要なサービスへのアクセスが困難または低い地域を特定し、不平等を減らす取り組みを支援します。また、コミュニティの経験を共有できるプラットフォームであることから、社会から疎外されているグループの住民生活の向上、公衆衛生の改善、デジタルデバイドの解消にも貢献します。
都市部における人々の移動パターンなどのデータを提供することで、持続可能な交通システムの開発、渋滞緩和など、必要なサービスへのアクセスの改善を実現します。また、フィリピンのいくつかの地域は海面下に位置し、台風の場合は洪水に見舞われるリスクが高いです。過去の洪水や台風時の安全な場所の特定を移動パターンと組み合わせて、災害リスク軽減計画を支援し、リスク回避と回復力の向上に貢献します。
15.緑の豊かさも守ろう
森林、水域、農地などの天然資源のモニタリングを可能にすることで、自然災害の影響を受けにくい土地にするための都市計画の見直しを支援します。また、都市開発などの人間活動が自然環境に与える影響に関するデータを提供することで、森林減少、砂漠化、土地劣化を軽減するための都市計画や対策、環境劣化につながる不法投棄や水質汚染の傾向を把握、洪水後の伝染病発生注意スポットの推測などに活用できます。
17.パートナーシップで目標を達成しよう
PIVEは、データの共有と分析のための共通のプラットフォームを提供することで、政府機関、NPO、NGO、民間団体、地域コミュニティ間の連携を促進し、より効果的で持続可能な開発を実現可能にします。また、開発プログラムのモニタリングと評価をサポートし、意図した目標を達成しているか、リソースが効果的に使用されているかの検証にも役立ちます。
今後の活動について
当社は本締結により、ADBイノベーション・ハブ、地方自治体 (LGU)、フィリピン統計局 (PSA)、内務・地方政府省(DILG)などの国・地方政府機関、NPO、NGO、フィリピン大学をはじめとする学術機関と緊密に連携しながら、フィリピンにおける貧困層の生活改善と脆弱性への対応を目的とするPIVEの開発・実施に努めます。
PIVEはダイナミックな社会の変化に対して、各々のコミュニティの貧困と脆弱性の分布を全体的に解釈・評価します。、そしてそれはニーズの高い地域に的を絞った介入・政策を実施することで支援活動を加速化し、問題への働きかけを強化することで援助の効果を高めることにも繋がります。このように、人々の住みやすさと問題が発生した際の回復力を向上させるための知見やデータをPIVEを通して提供してまいります。
エコノミストフォーラムでの反響
今回の契約に先立ち、2023年1月18日~20日に開催されたアジア開発銀行エコノミストフォーラムでは、PIVEチームがプレゼンテーションを行い、ADBのチーフエコノミストであるアルバート・パーク博士を含む出席者の関心を集め好評を得ました。PIVEプロジェクトの都市計画や災害対策に役立つ知見・データを提供して活用する、という仕組みが、このフォーラムのテーマである「レジリエントな未来に向けて」にとても合致し、将来への影響力が評価されました。
ADBエコノミストフォーラムのポスタープレゼンテーションにて
(左からNPO法人ソルト・パヤタス事務局長Timothy Alconga氏、
ADBチーフエコノミストAlbert Park博士、SafeTravelPH共同設立者Noriel Tiglao教授)
当社は本プロジェクトを通してさらなる持続可能な開発と経済発展に貢献してまいります。
■アジア開発銀行について
アジア・太平洋地域における経済成長及び経済協力を促進し、開発途上国の経済発展に貢献することを目的として1966年に設立された国際開発金融機関です。
2021年に発足したADBイノベーション・ハブは、ADB内でイノベーションを推進する文化を育て、複雑な開発課題に取り組むために、途上国メンバー国とともに革新的なソリューションを設計することを目的としています。
高度技術信託基金は、開発課題に取り組むプロジェクトを通して、高度な技術や革新的ソリューションの活用を促進するために、2017年に設立されたADBが管理するマルチドナー信託基金です。日本政府は、同基金の最初のドナーです。